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「……悠稀を手にいれるのは、どっちかしら?」 前まで全く相手にされていなかった徹斗は、今回の事で少しは見方が変わっているだろう。 となると、前みたいに悠紫一人が悠稀を独占する事がなくなった。 悠紫がうかうかしているのなら、徹斗にだってチャンスがあるかもしれない。 だから、どちらが悠稀の心を掴むのか楽しみだ。 「それにしても、大樹先輩は可哀相ね」 悠稀に全く相手をされなくて。 自分が手伝わなくても、悠紫と悠稀が付き合う可能性は薄くなってきた。 今の悠稀の気持ちは、徹斗の方に動いているみたいだから。 それに、やっぱり自分は悠稀が決めた事に反対はしたくない。 だから大樹には悪いが、自分は悠稀が悠紫と付き合うのなら祝福してあげたいのだ。 「大樹先輩も、行動に移さないとね」 本気になった悠紫と、悠稀が意識しだした徹斗。 この二人に勝てる事は、多分ないだろうけど。 そこまで考えて、紘子は小さく笑う。 「報われないなぁ、大樹先輩も私も」 やっぱり、諦めようか。 大樹の好きになった人には、勝てる気がしないから。 「……悠稀、教室一緒に行きましょう」 気が付いたら学校の靴箱にいて、慌てて紘子は悠稀に声をかける。 「わかった。さよなら、悠紫」 「あぁ」 悠紫と離れてこっちに向かってくる悠稀を見ながら、紘子はどこか吹っ切れたような笑みを浮かべていた。
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