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大樹は一人、首を傾げていた。
その原因は目の前にいる四人だ。
悠稀と紘子がずっと何か話し続けているのはいつもの事だが、悠紫と徹斗が二人並んでいるのはありえない。
それに、紘子が今日は全くこっちを見ようとしないのだ。
「俺、何かやった?」
いつもいつも、いつの間にか自分のすぐ近くにいる紘子。
それが自分には当たり前になっていたんだと、いまさら気付いた。
今日、紘子に会ったのはこの帰る時だけ。
それも紘子は全くこっちを見ようとしない。
何か心にぽっかり穴が開いた気分だ。
「……変、だな」
いつもは、悠稀の事で頭がいっぱいなのに。
なんで今は、紘子の事が気になって仕方ないのだろうか。
「大樹」
気付いたら、自分のすぐ横には悠紫がいた。
「悠紫。お前、出水と睨み合ってなかったか?」
いつの間にか移動したのだろう。これでは、まるで紘子だ。
そう考えて、胸がずきっと痛みだす。
「そんな事はどうでもいいだろ。羽都はどうしてる?」
「あぁ、正式にプロポーズを受けるらしい。今日父さんにそう言ってた」
てっきり、嫌な顔をすると思っていた。
なのに悠紫はとても幸せそうな笑みを浮かべている。
「そうか。よかった」
小さく呟かれた言葉に、大樹は顔をしかめた。
「羽都を思い出にしたんだ。だから、羽都の幸せは何よりも励みになる」
微笑んだ悠紫の表情は、とても力強くて嬉しそうだ。
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