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羨ましい、と素直に思う。 別れた後もお互いの幸せを願っていられる悠紫と羽都が。 「お前ら、強いよな」 小さく呟かれた言葉に反応したのかは分からないが、悠紫が視線を大樹に向ける。 「なぁ悠紫。俺は、田之上が好きなのか?」 「……いきなりなんだ?」 大樹の言葉に、悠紫は顔をしかめる。 自分からしたら、大樹は確かに悠稀に恋をしていると思っていたのだが。 「わからなくなったんだ。俺は、誰が好きなのか」 目を伏せる大樹を見て、悠紫は少し考えるように顎に手をおく。 「誰と誰で迷ってる?」 「田之上と、紘子」 いきなり出てきた紘子の名前。 悠紫はますます悩んでしまう。 大樹はもともと恋愛経験なんて皆無なのだ。 それと同じように、悠紫にも恋愛経験はほとんどない。 自分は理解したからまだいいのだろうが、大樹はどうだろう。 誰かが相談に乗らなければ、分からないのではないか。 「俺は、お前は田之上が好きなんだと思ってた」 でも、違うのかもしれない。 今なら分かる。自分が悠稀に恋をしているから、分かる。 「お前が好きなのは、悠稀じゃない」 大樹が悠稀に抱いてる感情。それは尊敬に近い、友情なのかもしれない。 そう言うと、大樹はふっと小さく笑う。
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