24

4/13
前へ
/373ページ
次へ
「尊敬って、なんでだよ」 「お前、自分が思っている以上に悠稀に執着してたな。どうせ自分の持っていないものを持ってる悠稀が羨ましかったんだろ」 自分が持っていないもの。 それは、心の強さだった。 今は誰も自分には逆らわない。 でもそれは、自分が持っている上野の名前のお陰。自分の力ではない。 それと同じように、自分には本当に友達と呼べるのは悠紫だけだ。 だから、強くなりたかった。 自分が強くなれば、ちゃんとした友達ができるのではないかと。 だから、それを持ってる悠稀が羨ましかったんだ。 「……そう、かもな」 何か吹っ切れたような顔の大樹。 もう悩みは解決したのだろう。 「まぁ、俺が田之上を好きでも、お前には勝てそうにねぇけどな」 笑いながら言われた言葉に、悠紫は珍しく顔を赤くする。 これは、本気なのだろう。悠紫の表情からそれを感じて、大樹は笑う。 悠紫がこんなに分かりやすいなんて知らなかった。 多分、それほどまでに悠稀の事が好きで、大切なのだろう。 「幸せそうだな」 「……あぁ」 小さな声で答えをもらって、大樹は満足そうに頷いた。 「さて、お前が田之上にぶつかっていくなら、俺は紘子にだな」 お互いがんばろうな。 楽しそうな大樹の様子に、悠紫はただ紘子の大変さを考えてため息を零した。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加