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「でもよ、最近ってか昨日から紘子が全くこっち見ないんだよ」 口を尖らして言う大樹の言葉に、悠紫は顔をしかめる。 「それくらい仕方ないだろ。立花もいつもお前の側にいる訳じゃないしな」 「……いや、いるんだ」 いつもいつも、紘子は自分の側にいた。 流石に授業中などはないが、昼休みや放課後などはいつもだ。 「今日、一度も来なかった」 彼女がなぜ来ないのかは分からないが、とても寂しい。 側にいて欲しいと、本気で願った。 「伝えてみればいいんじゃないか?」 そんなに大切に思われているのだから、紘子は嬉しいはずだ。 彼女は、大樹の事が大好きだから。 「んな恥ずかしい事できるか!」 いきなり叫びだした大樹に驚いたのか、悠紫以外の三人の視線が大樹に集まる。 「煩いですよ、上野先輩」 大樹の顔が凍り付く。 悠紫も悠稀も、慌てて紘子の方に目を向けた。 今、紘子が大樹の事を苗字で呼んだのだ。 紘子はいつも、大樹先輩と嬉しそうに呼んでいるのに。 「紘子、どうしたの?」 悠稀の心配そうな声に、首を傾げる。 まるで何で心配されているのか分からないという風に。 「紘子?」 大樹の問い掛けには、まるで答えない。 いつもの答えが返ってこないだけで、こんなに悲しいのか。
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