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結局、二手に別れるまで紘子は一回も大樹と話そうとはしなかった。 別れた紘子の後ろ姿を心配そうに眺めている悠稀を見て、徹斗は頭を撫でる。 「大丈夫だって、すぐになおる」 根拠などはないけど、悠稀を安心させたくて。 徹斗の笑顔に、悠稀は少し安心したようだ。 「悠稀」 不意に、二人の後ろから声をかけられた。 振り向いた先にいたのは、別れたはずの悠紫。 「悠紫、どうしたの?」 「久しぶりに悠稀の家へ行きたくて」 追ってきたんだ。と、普通に言う悠紫に少し呆れる。 「そうねぇ、今日は徹が無理だから別に大丈夫よ」 ふわりと笑う悠稀。 その言葉に1番慌てたのは、徹斗だ。 「え、悠稀いいのか!?」 不満気な徹斗の様子に首を傾げて、悠稀は問い掛ける。 「駄目な理由があるかしら?」 その言葉に、徹斗は何も言えなくなってしまう。 駄目な理由は簡単だ。自分が悠稀と悠紫を一緒にいさせたくないから。 でも、そんな事を言っても意味がないのは分かっている。 これほど用事が入っている事を怨んだ事はない。 「じゃあ、決まりだな」 対する悠紫は、とても嬉しそうだ。 何か負けたように感じるが、今日くらいは悠紫に譲ってやろう。 そうやって無理矢理納得させる。 そして少しの遅れを取り戻すように、徹斗は小走りで悠稀の元へ走っていく。
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