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「それじゃ、俺は帰るな。悠稀、気をつけろよ」 そういう徹斗の視線の先には、少し離れた位置にいる悠紫。 誰を見ているのか理解した悠稀は、くすくす笑い出す。 「馬鹿ね、悠紫に気をつけてどうするのよ」 彼女は、悠紫を信頼しているようだ。 やっぱりおもしろくない。 徹斗は拗ねた表情を浮かべていたが、すぐに企んだような笑みに変わる。 「じゃ~な、悠稀」 悠紫がこっちを見ている事を確認した後にそう言うと、徹斗は悠稀の頬に口付ける。 「て、徹!」 真っ赤な顔をして慌てる悠稀と、驚きに目を見開いている悠紫。 悠紫に勝ち誇った笑みを向けた後、徹斗は手を振りながら帰っていく。 「……悠稀?」 未だに頬に赤みの残る悠稀の顔を、下から覗き込むように見る。 「な、何?」 体を少し後ろに反らしつつ、律義に返事を返す。 「いや、ただぼんやりしてたから」 悠紫の言葉に微笑むと、悠稀は鞄から鍵を取り出す。 「大丈夫よ、ありがとう」 家に入っていく悠稀の後を追い掛けつつ、悠紫は考える。 彼女が、悠稀が徹斗を気にしているのは見ていたら分かる。 前と違って、徹斗の行動一つ一つに反応しているのだ。 自分が少し離れた間に、二人の距離が狭まったのなら。 あんな軽はずみな行動をした自分を、少しだけ後悔してしまいそうだ。
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