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家に入ると、悠紫はソファーに座り込む。
悠稀の家のソファーはふかふかしていて、図書室のよりも座り心地がいい。
「お茶?コーヒー?それとも紅茶?」
「紅茶でいい」
悠稀の問い掛けにそう返事をしてから、悠紫は回りを見回す。
少し来なかっただけなのに、とても懐かしく感じる。
それに苦笑しながらも、家中についている徹斗の気配に落ち着かなくなってしまう。
「俺じゃないからな」
最近、悠稀の家に泊まっているのは自分じゃない。
だから、自分の気配が消えるのは仕方ないのかもしれないが。
やっぱり慣れないものは慣れないのだ。
「どうしたの、悠紫?」
ティーカップを二つ持ちながら、悠稀が不思議そうに出て来る。
「いや、何も」
渡してきたカップを受け取りながら、悠紫はただ首を振る。
「そう?」
悠稀もソファーに座り、ティーカップに口をつけた。
悠稀がいれてきたのは、ミルクティーのようだ。
甘くもなく苦くもない、ほどよい味が口に広がる。
「美味いな」
そう呟かれた言葉に、悠稀は嬉しそうに笑う。
「ありがとう、嬉しいわ」
そう言うのだから、この紅茶は悠稀が一から煎れたのだろうか。
全く、何をやらせても難無く熟してしまうのだから悠稀は凄い。
自分にも、少しくらいは悠稀の器用さをわけてもらいたいものだと思う。
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