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学校が終わって、ようやく悠稀にも安らぎが訪れた。
誰も居なくなった、がらんとした学校。
その図書室に居た、悠稀と悠紫がかばんを手に持つ。
「さて、そろそろ帰るか」
完全に人が居なくなったのを確認して、悠紫が悠稀を振り返る。
その視線の先には、複雑そうな表情の悠稀。
姿は、いつも通り髪をおろして眼鏡をとった、素の姿。
「………ん」
考え事があるから、素っ気ない返事。
過去を思い出して、また悠稀は悩んでいた。
彼を信じている。だって、一回も裏切らなかった。
ちゃんと悠稀の愚痴を聞いてくれて、それでいて嫌な顔一つしない。
今も昔も、悠稀を虐めないのは悠紫だけなのだ。
「考え事か?」
いきなり、目の前に現れた悠紫の顔に、悠稀は少し驚いた。
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