24

9/13
前へ
/373ページ
次へ
「それで?」 いきなり悠稀がそう聞くので、悠紫は首を傾げる。 「それで、何か用があったんでしょ?」 流石は悠稀、鋭い。 悠紫はため息をついて、紅茶を机の上におく。 「そんなに急かさなくてもちゃんと言う」 「あら、そう?」 よく見ると、悠稀のカップはもう空だ。 飲むのが早いというか、紅茶はもっとゆっくり飲むものなのに。 どうでもいい事を考えながら、悠紫はただ悠稀を見る。 「何?」 そんな視線に堪えられなくなって、悠稀は居心地悪そうに身じろぐ。 「いや、何も」 そう言いながらも、視線は真っ直ぐ悠稀に向いている。 小さなため息をついて、悠稀は立ち上がった。 「私、ちょっと紅茶煎れてくるわ」 つん、と顔を背けて立ち上がると、悠稀はさっさと台所に向かう。 またやってしまった。 言いたい事は羽都の事なのだが、何故か今まで口に出せない。 それは多分、この部屋中に感じる徹斗の気配のせいで。 そっちが気になりすぎて、話しを切り出せなかった。 「話しは?」 いつの間にか自分のすぐ側に来ていた悠稀を見て、悠紫は笑う。 「羽都の事だけど」 「あら、徭は元気?」 悠稀の中では、羽都は徭らしい。 まぁ、まだしっかりした挨拶をされたわけではないから仕方ないが。 「羽都、婚約者がいるんだよ」 「婚約者?」 目を丸くさせて驚く悠稀。 悠紫はそんな悠稀の反応に一度頷いてから、また話し始める。 「あぁ、羽都はその婚約者と結婚するらしいから、これを」 そう言って差し出したのは、白い紙。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加