24

10/13
前へ
/373ページ
次へ
「なぁに、これ?」 「羽都が最後に、みんなで出掛けたいらしい」 そう言って紙を見てみると、それは温泉旅行の券だ。 それが6枚ある。 「なんで6枚も?」 「俺達4人に、出水と羽都の分」 悠稀の表情は変わらないが、驚いているようだ。 「徹の分もあるのね」 羽都は案外ちゃんとした性格なのかもしれない。 一度会っただけの自分達も招待してくれた。 「彼女、いい子ね」 悠稀の柔らかい表情を見て、悠紫も笑う。 「あぁ。大樹とは大違いだろ?」 茶目っ気たっぷりの悠紫の言葉に、悠稀はくすくすと声をあげる。 「そうね、大違いだわ」 愛らしい羽都と、意地っ張りな大樹。 似ているところもあまりないし、二人が兄妹だという事があまり信じられない。 「ねぇ、彼女に会えないかしら」 いきなりの悠稀の提案に、悠紫は困ったように眉を寄せる。 「いきなりは無理かもなぁ」 「やっぱり?」 残念そうに言う悠稀を見て、悠紫は少し考え込む。 彼女のお願いを叶えてあげたい。 だが、やはり羽都にも迷惑をかけるわけにもいかないのだ。 「明日、聞いてみるよ」 そう言うと、嬉しそうに悠稀の表情が明るくなる。 「ありがとう!」 ふわりと花が咲いたような笑顔を見て、悠紫は言って良かったと感じた。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加