24

11/13
前へ
/373ページ
次へ
次の日、悠紫から話しを聞いた羽都はわざわざ悠稀の家まで訪ねてきた。 「あら、いらっしゃい」 「悠紫から話しを聞きました。私も会いたかったので、迷惑かと思ったんですが家まで来さしていただきました」 丁寧な口調で話す羽都と、その後ろに立っている悠紫を招き入れる。 「あ、いらっしゃい」 悠稀の家のリビングには、まるでこの家の一員のような顔でいる徹斗の姿。 「徹、ここは貴方の家じゃないわよ」 呆れたような笑顔の悠稀に、徹斗は笑う。 「なんだよ、ここは俺ん家みたいなもんだろ。とりあえず、二人とも入れば?」 そんな徹斗の態度に内心苛立ちながらも、そんな様子を全く見せない悠紫。 そんな悠紫の内心に気付いている羽都は、くすくす笑いながら悠紫の後に続く。 「紅茶、いる?」 「あ、ありがとうございます」 悠稀の問い掛けに答えてから、羽都は落ち着かない様子で回りを見回す。 あの時の自分と今の自分は、全く境遇が違う。 なのに悠稀と徹斗は、何もなかったかのように前の自分と同じように接してくれる。 それが嬉しくて、騙していた事には心が痛む。 「あ、あの!」 持ってきた紅茶を机に置いた悠稀が、羽都を見る。 甘いミルクティーの匂いが、羽都を落ち着かせてくれた。 「……改めまして、私は上野羽都。大樹お兄様の妹です。よろしくお願いします」 「そう。よろしくね、羽都」 羽都はやっと、悠稀に本名を呼んでもらえた。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加