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「それで、用はそれだけ?」 自分の作ったミルクティーを口に含みながら、悠稀は視線だけを羽都に向ける。 「あ、えと。旅行の件なんですが」 大丈夫かどうかもついでに聞きにきたらしい。 悠稀と徹斗は顔を見合わせ、小さく笑い合う。 「えぇ。私たちは対した用もないから大丈夫よ」 その言葉に、羽都の表情は明るくなる。 それほどまでに一緒に行きたかったのだろうか。 首を傾げた悠稀に、羽都は笑いかける。 「私は、上野家の人間です。そのせいで全く交友関係がなくて、旅行を友達と一緒に行けるなんて喜びなんです!」 幸せそうに話す羽都だが、内容はあまりいいものとは思えない。 自分の家柄のせいで、彼女は辛い思いをしてきたのだろう。 そう思うと、悲しくなってくる。 「私でいいなら、羽都の友達になるわ」 「本当ですか?ありがとうございます」 ふわりと笑う羽都。 悠稀の言葉は同情から出た言葉かもしれないが、羽都にとってはそれでも十分。 はじめてできた友達が、悠稀のように素晴らしい人なのだから。 「ところで、旅行の日にちは?」 何も書いていない紙を気にしてか、悠稀が羽都に問い掛ける。 「えっと、今週末ですよ」 今週末。 早過ぎる予定に、流石の徹斗も口をだらしなく開けたまま。 悠稀にいたっては、聞いていた表情のまま固まっていたのだ。
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