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「早過ぎない?」
「え、そうですか?」
悠稀の問い掛けに首を傾げつつ、羽都の視線は悠紫に向かう。
その視線に、悠紫は一回頷いた。
「私も兄様も、準備は完璧ですよ」
にこにこ笑いながら言う羽都は、どこかずれている。
第一、まだ紘子にも伝えてはいないのに。
「遅らせるのは、やっぱり無理かしら?」
申し訳なさそうな悠稀の言葉。
一瞬だけ傷付いたような表情を見せる羽都だが、すぐに気を取り直したのか微笑む。
「少し、それはきついですね。紘子さんには私から伝えてますよ」
大樹の家を頻繁に出入りしていた紘子は、勿論羽都とも仲がいい。
実は、もう旅行の話しはしてあるのだ。
ちゃんと了解済みである。
「あら、ならいいわ。がんばって準備するわね」
羽都の根気に負けたのか、悠稀は困ったような笑顔で了承する。
悠稀が認めた以上、徹斗が嫌がるわけもなく。
結局は羽都の最初の予定通りになった。
「急過ぎるわね」
「全くだ」
悠紫と羽都が帰った後、悠稀と徹斗は顔を見合わせる。
苦笑を浮かべながらそう言葉を交わした後、すぐに悠稀は自分の部屋へ、徹斗は自分の家へ向かう。
あれだけ楽しみにしている旅行を、台なしにしないためだ。
早めに荷造りを開始した悠稀は、今週末に行く旅行を考えて小さく笑う。
「楽しい旅行になりそうね」
呟いた後、悠稀は必要な物を探すために動き出した。
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