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「着いた~!」 大きな伸びをして、徹斗は言う。 そんな徹斗の数歩後ろにいた悠稀は、苦笑を浮かべながら横にいる悠紫を見る。 悠紫の表情にはあまり変わりはない。 だが、それでも少し嬉しそうに見えるのは気のせいではないだろう。 今、悠稀達は6人で旅行に来ていた。 バスに乗って数時間。場所は、山に囲まれた旅館。 田舎という言葉が相応しい場所だが、悠稀はこの雰囲気が好きだ。 「えっと、女の子同士と男の子同士、別々の部屋ですからね」 何か書かれているのだろう。 羽都は紙を見ながら指示を出していく。 旅館の人達に荷物を預けて、悠稀達は部屋へ向かう。 「わぁ、広い!」 紘子の感激したような声。 3人部屋にしては広すぎる、綺麗な部屋だ。 「羽都、これ絶対に3人部屋じゃないわよね」 呆れたような悠稀のため息を全く気にする事なく、羽都は笑う。 「当たり前です。3人部屋は狭すぎますよ」 悠稀や紘子にしたら、3人部屋の広さで調度いいのだが。 流石はお金持ち。価値観がまるで違う。 「徹達の部屋もこれくらい?」 「はい。確かそのはずですよ」 よくこんな広い部屋を二つも。 こういうところにお金をかけるところを見ると、羽都は旅行を凄く楽しみにしていたようだ。 「仕方ないなぁ」 それを考えると、悠稀は羽都の言葉に笑う事が出来なくなる。 安っぽい同情とは気付いている。それでも、やはり羽都は可哀相だと感じてしまうのだ。
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