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「静かですね」
自然と無言になっていた悠稀達。
その静けさを破ったのは、羽都だ。
「そうね、落ち着くわ」
それに紘子が答えるが、悠稀は相変わらずの無言。
ただ回りを見回すだけで、悠稀は羽都にさえ視線を向けない。
「悠稀さん?」
「なぁに?」
名前を呼ばれて、やっと視線を羽都に向ける。
「気にいりました?」
景色の事だろうか。羽都のにこやかな問い掛けに、悠稀も笑う。
「えぇ、とても。都会にはこんなに落ち着く場所なんてないもの」
「そうよね、少しくらい緑も増えたらいいのに」
ふぅ、と頬に手を添えながら嘆く紘子。
くすくす笑いながら、羽都は急に走り出す。
「羽都?」
「急ぎましょう。川、とても綺麗らしいですよ」
そのまま走って行きそうな羽都にため息をつくと、紘子と悠稀は顔を見合わせる。
「ねぇ、悠稀」
「何?紘子」
見合わせた顔に、二人ともなにか企んだような笑み。
「競走しようか」
「あら、いいわね」
そう言い終わると同時に、弾かれたように二人は走り出す。
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