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「え、え?」 何も知らない羽都を抜かして、悠稀が走りながら振り向く。 「競走しましょう、羽都」 「頑張って追い付いてね」 紘子も振り向いて羽都に手を振ると、また前を向いて走る。 二人とも並んで走っている横に、羽都が追い付く。 「私、運動だけは得意ですよ!」 「あら、凄い」 「流石、上野先輩の妹」 紘子はまだ、大樹の事を上野先輩と呼んでいるようだ。 何が原因かは全く分からないから、この旅行はある意味好都合。 いつか時間をとって、じっくりと聞き出すつもりでいたから。 「悠稀、遅れてるよ」 紘子の指摘にはっとした。 やはり、考え事などするもんじゃないな。 頭の中で考えた言葉に苦笑して、首を振ってから走り出す。 だいぶ離れてはいるが、まぁ少し本気を出せば追いつけるだろう。 昔から、勉強よりも運動の方が得意だった悠稀。 長距離でも短距離でも、負ける気がしない。 「すぐに追い付くわよ!」 「頑張ってね~」 余裕で手を振る紘子に苦笑して、すぐに悠稀はスピードを上げる。 少しずつだが距離を縮めていく悠稀を、羽都は関心したように眺めていた。 「悠稀さん凄い!」 「ああ見えて、彼女は運動が好きだから」 すぐ近くまで来た悠稀を見て、羽都と紘子は同時に止まる。
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