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一日だけという短い旅行を終え、悠稀は家に帰ってきた。 何故か徹斗も一緒だが、悠稀の家は徹斗の第二の家と同じなのでほとんど気にしない。 「おかえり、悠稀。徹斗君も」 「ただいま」 「お邪魔します」 リビングに入って、悠稀と徹斗は唖然とする。 昨日は白を基調としていたリビングが、今日は黒になっていた。 ソファーに棚、本棚までが黒いものに変えられていたのだ。 「……母さん、また?」 「だって、飽きちゃったのよ」 悪びれる様子もなく言い放つ柑奈に、流石の徹斗も呆れる。 悠稀は慣れているのか、疲れたようにため息をつくだけだ。 「全部母さんでやってよ」 「分かってるわよ。もう、悠稀は冷たいわね」 ぷくっと頬を膨らます柑奈を軽くあしらう悠稀。 そんな時、チャイムの音が鳴り響く。 「だぁれよ、こんな時に」 いきなり不機嫌そうに眉を寄せる柑奈。 だが、すぐに笑顔で悠稀の方を見る。 「わかったわよ、行ってくる」 何が言いたいのか理解して、悠稀はため息と共にリビングを出る。 扉の前に立った悠稀は、一瞬嫌な予感を感じて手を引っ込めた。 チャイムが鳴り響く。悠稀を急かすように。 仕方ない、待たせるのも悪いか。 そう思って、悠稀は扉を開けた。
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