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チャンスは、案外すぐに訪れた。 「明日、少し出掛けてくるよ」 そう斎が言い出したのは、悠稀が徹斗に話してから一週間が経った時だ。 悠稀と柑奈は顔を見合わせる。 こんなにすぐ、呼ぶ事が出来るなんて。 「わかりました、行ってらっしゃい」 柑奈がにっこりと笑う。 それに斎も笑顔で答える。 悠稀は、そんな二人の関係にどこか疑問を持っていた。 いつも敬語を使わない柑奈なのに、何故か斎には敬語。 そんな、二人の間に見えない壁があるみたいで。 だから悠稀は、前に聞いた事があるのだ。 柑奈と斎の関係を。 言われた言葉は、ただ一言。 「愛してないわ」 それだけだった。 その日から、今までなら気にもとめなかった柑奈の微妙な態度がわかるようになったのだ。 今みたいな敬語。寝る場所は別々。どこか、他人みたいな接し方。 悠稀は、そんな接し方をされても気にしない斎を、軽蔑するようになった。 柑奈に、結婚した経緯を聞いてからは特に。
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