27

6/7
前へ
/373ページ
次へ
だが、それはすぐに終わってしまう。 「ただいま、庭にいたのか……」 斎が帰ってきてしまったのだ。 柑奈も悠稀も、目を見開いて固まる。 それは斎も同じで、目の前にいる徹斗が誰か分かっていないようだ。 徹斗はその微妙な空気に堪えられなかったのか、悠稀のすぐ横に移動。 それを見た瞬間、斎の表情がみるみる内に変わる。 「誰だ、そいつ」 低い声に、悠稀は震え上がった。 父を怒らせたら、大変な事になる。 身をもって知っている悠稀だが、何も上手い言い訳が思い付かない。 柑奈もそれは同じようで、小さく唸って必死で考えている。 だが、その間にも斎の機嫌はどんどん悪くなるばかり。 今にも殴り掛かりそうな表情だ。 「悠稀の知り合いか?」 頷く事なんか出来ない。 頷いてしまったら、斎がどんな行動に出るか分からないから。 悠稀と柑奈は目を見合わせて、一つ頷く。 まずは、斎の機嫌を取る。 そして、なんとしてでも徹斗を帰さなくては。 だが、斎の事を知らない徹斗は悠稀達の考えを知らなくて。 父親だという事だけ分かっていたから。 「はじめまして、出水徹斗です」 悠稀の肩に手をおいて、自己紹介をする。 瞬間、空気が凍りつく。 「悠稀に、触るな!」 斎が、怒り狂ったように叫ぶ。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加