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だが、それはすぐに終わってしまう。
「ただいま、庭にいたのか……」
斎が帰ってきてしまったのだ。
柑奈も悠稀も、目を見開いて固まる。
それは斎も同じで、目の前にいる徹斗が誰か分かっていないようだ。
徹斗はその微妙な空気に堪えられなかったのか、悠稀のすぐ横に移動。
それを見た瞬間、斎の表情がみるみる内に変わる。
「誰だ、そいつ」
低い声に、悠稀は震え上がった。
父を怒らせたら、大変な事になる。
身をもって知っている悠稀だが、何も上手い言い訳が思い付かない。
柑奈もそれは同じようで、小さく唸って必死で考えている。
だが、その間にも斎の機嫌はどんどん悪くなるばかり。
今にも殴り掛かりそうな表情だ。
「悠稀の知り合いか?」
頷く事なんか出来ない。
頷いてしまったら、斎がどんな行動に出るか分からないから。
悠稀と柑奈は目を見合わせて、一つ頷く。
まずは、斎の機嫌を取る。
そして、なんとしてでも徹斗を帰さなくては。
だが、斎の事を知らない徹斗は悠稀達の考えを知らなくて。
父親だという事だけ分かっていたから。
「はじめまして、出水徹斗です」
悠稀の肩に手をおいて、自己紹介をする。
瞬間、空気が凍りつく。
「悠稀に、触るな!」
斎が、怒り狂ったように叫ぶ。
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