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「起きた?」
うっすらと目を開けた悠稀の前に飛び込んできたのは、太陽のような金。
いつの間にか、気を失っていたようだ。
徹斗の心配そうな顔が、見える。
金になった髪を、最初は見慣れなくて。
それでも金にした理由を知っているから、見る度に胸が痛む。
こんな事なら、黒のままでいてくれたらいいのに。
そんな事を徹斗に言えるほど、悠稀は酷くないが。
知っているのだ。
徹斗が、悠稀の事を思って染めてくれたのを。
黒髪だと、傷が目立つ。
その傷を見て、悠稀が苦しまないように。
自分のせいだと責めたりしないように。
そんな思いを込めて、徹斗は自分の髪を金にしたのだ。
申し訳なかった。
彼の綺麗な黒髪を見れなくなるのが悲しかった。
そして何よりも、そんな事があっても自分の側にいてくれる徹斗が。
どうしようもなく、苦しかった。
「……徹」
掠れて、小さくなってしまった声。
それでも反応する徹斗を見ると、泣きたくなった。
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