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悠稀が小さく身じろぎして、唸る。
それを聞いた徹斗は、さっきから反らしていた視線を戻す。
自分の家の自分の部屋。
そして自分のベットに、自分の好きな人が寝ている今の状態。
そんな状態なのだから、徹斗は悠稀を直視出来なかった。
覗き込んだ時、悠稀の目がゆっくり開く。
「起きた?」
そう問い掛けると、悠稀の目が自分に向けられる。
ぼんやりした眼差しが、自分を見ている。
いや、違う。自分を見ているのではない。
自分を見ている事は見ているのだが、今悠稀が見ているのは昔の自分。
眼差しだけでもそこまで分かるようになっていて、苦笑を浮かべる。
「……徹」
「ん?」
掠れた小さな声に、笑顔で答える。
そっと悠稀の手が髪の毛に伸びた。
自分の明るい金の髪を撫でながら、悠稀の目が潤む。
額にある髪を退けると、現れる醜い傷痕。
「……ごめん」
小さく小さく、悠稀が泣きそうな声で謝る。
「何が?」
「私のせいで、こんな傷が残って。本当に、ごめんなさい」
ぽつりと、悠稀の瞳から涙が零れた。
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