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「俺さ、悠稀が好きだ」
不意に、徹斗が呟いた。
抱きしめられる力が強くなって、悠稀は戸惑う。
「……え?」
今のは、どういう事だろう。
顔を上げようとしても、押さえられて上げる事ができない。
「あ、私も好きよ」
「……違う」
戸惑い気味に返した悠稀の返事。
徹斗は、低い声で否定した。
「違う。悠稀が言ってるような意味じゃ、ない」
そこまで聞いて、悠稀は目を見開く。
分かってしまったから。
徹斗が、何を言おうとしているのか。
自分の予想が正しければ、徹斗は。
「俺は、悠稀の事を……」
「やめて!!」
聞きたくない。
つい、徹斗の言葉を途中で遮ってしまう。
目を見開いて驚いていた徹斗だが、悠稀を突き飛ばすように離す。
よたついた悠稀を助ける事もしないで、真っ直ぐ見てくる。
その瞳を困ったように見つめると、徹斗の顔がみるみる険しくなった。
「知ってたのか?」
低い声で言われたその言葉。
悠稀が1番聞かれたくない言葉だ。
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