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何も言わない悠稀。
それが、なによりの肯定だった。
「……ずっとずっと、俺の気持ち知ってて側にいたのか?」
悠稀は、何も言わない。
それが徹斗の怒りを加速かせる。
「それが、お前の答えか」
強い力で肩を掴まれる。
悠稀は低い低い声に怯えたように目を見開いているが、そんな事はしらない。
「どうなんだよ!」
「ごめん、なさい」
徹斗の叫びに、悠稀は俯いて小さく呟く。
そんな言葉を聞きたくなかった。
なんの事?って、いつもみたいに惚けてくれたらいいのに。
そうしたら、断られてもすっきりするのに。
「でもね、徹!私は……」
「うるさいな」
悠稀の言葉を遮る徹斗は、完全にキレていた。
「なんだそれ。じゃあお前は、俺の気持ちを知ってて俺を頼ってたのかよ。人の気持ち、利用してたのか!」
「そんな、事」
ない。そう言い切れずに悠稀は俯く。
ふっと、徹斗が部屋の扉に向かうのを気配で感じた。
扉を開けて、出ていく瞬間。
徹斗は背を向けたまま、言い放つ。
「……お前、最低だよ」
扉の閉まる音だけが、虚しく響いた。
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