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後から後から流れてくる涙。
もう、近くに拭ってくれる人はいない。
「ごめんなさい」
聞いてくれる人もいないのに、悠稀は謝り続ける。
許してもらえるなんて思ってないけど。
どうしても、謝りたかった。
「ごめんなさい、徹」
そういえば、徹斗が自分に好意を寄せていると気付いてから、名前を呼ばなくなった。
名前は1番身近なものだから、これ以上徹斗が自分を好きにならないように。
今は、無駄な行動だという事くらい分かっていたけど。
本当に呆れるくらい、彼は優しかった。
何も知らず、ただずっと悠稀を守ってくれていた。
それが、悠稀にとっては苦痛だという事にも気付かずに。
守られる度、徹斗が傷付く度に、悠稀の心が傷付く。
それは多分、無くしたはずの恋心のせい。
もう一度芽生えそうになったそれを、悠稀は自分で摘み取り続けた。
芽生えなくていいから。自分は、もう頼りたくないから。
徹斗から離れよう。
もう、彼を傷付けなくていいように。
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