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次の日、紘子は悠稀を見て驚いた。
何故なら、悠稀は目を真っ赤にしていたから。
聞かなくても分かる。
「どうしたの?」
理由は分からないが、悠稀が泣いたのだという事が。
「……なんでもないわ、気にしないで」
弱々しい笑み。
無理をしている事くらい、見たら分かるのに。
悠稀はいつも通りに振る舞っている。
「どうした?」
そんな悠稀の態度に悠紫が気付かないわけがない。
心配そうな悠紫を見ても、悠稀の虚勢は変わらない。
何も言わない、何も聞かれたくない。
そんな拒絶の気配を肌で感じて、途方にくれる。
多分、悠稀は言わない。
何があったのかを言わないまま、ずっと無理をするのだ。
それが悠稀の性格。
だから、紘子も悠紫も深く入り込む事はしなかった。
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