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昼休み、屋上でご飯中。 悠紫は回りを見て、ため息をつきたくなる。 悠稀はずっと俯き気味で、紘子は相変わらず大樹の方を見ない。 大樹は、そんな紘子を悲しそうに見ている。 無言のため、酷く居心地が悪い。 「紘子」 ため息をついて、悠紫は近くにいた紘子に話し掛ける。 「なぁに、悠紫先輩」 「今日、買い物に付き合って欲しい」 悠稀が落ち込んでいる理由は分からないが、やっぱり放ってはおけない。 なんでもいいから、悠稀の気を紛らす物が欲しいから。 紘子なら、それをよく分かっているだろう。 そんな悠紫の思いを理解したのか、紘子は笑いかける。 「えぇ、いいですよ。私も暇だったんで」 二人の楽しそうな会話。 久しぶりに見た、紘子の笑顔とからかうような声音。 全てが大樹に向けられる事のないもので。 胸が締め付けられた。 それから、大樹が紘子を見る事はなかった。
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