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「悠稀~、ご飯いかない?」 お弁当箱を持って、紘子が近寄ってくる。 昨日に引き続き、悠稀は全然元気がなかった。 悠紫も大樹も、今日はまだ会っていないし、紘子はお手上げだ。 昼には回復してくれたらいいのだが。 「悠稀、聞いてる?」 この調子だ。 元気がないのに加えて、今日はずっと上の空で紘子の話しを全く聞いていない。 そんな時、扉が開く音がする。 顔を出したのは、珍しい事に大樹だった。 その後ろには、悠紫の姿も。 「悠稀」 びくっと悠稀の体が反応する。 悠紫と紘子は、目を見開いて大樹を見た。 「……大、樹」 呟かれた名前に、紘子の胸が痛む。 これは、どういう事なのだろう。 なんで、悠稀は悠紫ではなく大樹の横に行く? どうして大樹は、複雑な顔で悠稀に笑いかけているのだろう。 理由も分からない問いだけが、紘子の頭に残る。
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