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「あ~、悪いんだけど、俺悠稀と二人で食べるわ」
大樹の困ったような言葉が、答えだった。
「付き合ってるの?」
悠稀に問い掛けたが、俯いたままで何も言わない。
何も言わない事は肯定だと、痛いくらい分かってる。
「……悠稀」
悠紫の切ない声や紘子の表情が、悠稀の胸を締め付けた。
「行こう、大樹」
逃げるように去っていく悠稀を見て、紘子は目を閉じる。
見たくないというような紘子を見て、悠紫は頭に手を置く。
怯えたように体を揺らし、悠紫を恐る恐る見上げた。
「何が起こってるのかなんて、今の俺らには分からないだろ。目を逸らすな」
悠紫はどうして、笑っていられるんだろう。
どうして悠稀は、悠紫ではなく大樹を選んだんだろう。
「もう、何がなんだか分からないわ」
ため息混じりに吐き捨てて、紘子は悠紫の腕を掴んで屋上に向かった。
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