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見ての通り、悠稀は虐められているのだ。
しかも、この学校のほとんどの人間に。
(あ~、やってらんない)
悠稀は無表情のまま、目の前の図書室と書かれた教室に入る。
図書室の中には、本来居る筈の先生や生徒は居なくて、代わりに一人の男子生徒が居た。
「今日も、か」
何が言いたいのかをすぐに理解して、悠稀は眉を吊り上げる。
「誰のせいで、私が虐められていると思ってんのよ。あの馬鹿野郎、黙らせてよ」
あなたなら、出来るでしょ。親友なんだし。
そう言いながら、悠稀は髪をおろして眼鏡を取る。
図書室は、素の自分を出せる唯一の場所だ。
「いつ見ても綺麗な顔だな、悠稀」
「……呼び捨てにしないで、矢神(やがみ)先輩」
いつも無表情の矢神の微笑を見て、跳ねる心臓がばれないように冷たく言い放つ。
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