31

2/9
前へ
/373ページ
次へ
大樹は一人、悠稀を待っていた。 走っていく悠稀を見届けた後に、バイクで送ればよかったと思いだし、小さくため息をつく。 「あ~、早く来いよ悠稀」 さっきから、何度も羽都から来るメール。 彼女は、悠稀に会うのを凄く楽しみにしている。 だから、まだかまだかと催促しているのだ。 いい加減、そのメールに耐え切れなくなってきた。 「まだかって言われても、肝心の悠稀がいねぇんだよ」 意味もなく携帯の開け閉めを繰り返す大樹。 悠稀の足であの家に行くのだから、まだまだ時間がかかるだろう。 「やっぱり、送ればよかった」 いまさら後悔しても意味はないが、そう思ってしまう。 一人でぽつんと立っている大樹。 大樹自身は気付いてないが、それに近付く影があった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加