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「傷付けたから自分から離れたくせに、俺らにどうこう言う資格なんてねぇよ!」 いきなりの大樹の反論に、徹斗は驚いて手を離す。 さっきと立場が逆転して、徹斗が大樹に胸倉を掴まれる。 「お前が何をしたとか、そういうのは全く興味ねぇけどよ。自分は逃げたのに、俺が傷付けるのは許さないってか?都合良すぎるんじゃねぇの」 見るからに不良のような大樹。 今の大樹の睨みは、本気で不良にしか見えなかった。 「別に、そういう意味で言ったんじゃない」 大樹の正論に、徹斗にさっきまでの元気はない。 ただ俯いて、小さな声でそう言うだけだった。 「……徹?」 不意に響いた、高い声。 それに、二人とも体を強張らせる。 「大樹、何してるの?」 静かすぎる声は、怒っているのだろうか。 大樹は徹斗から手を離し、悠稀の方を見る。 「おかえり」 「えぇ」 にこりともしないで、悠稀が答えるために大樹を見た時。 いきなり、徹斗が走り出す。
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