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「徹!」
悠稀が気付いて追いかけようとするが、大樹が止める。
「離してよ、大樹!」
悠稀の叫び声が響く。
なのに、大樹は首を横に振るだけで離そうとはしなかった。
その間に、徹斗の姿は角へ消える。
「待って!!」
結局、悠稀の声に徹斗は止まってくれなかった。
俯く悠稀の腕を離し、大樹は小さくため息。
「あのな、悠稀」
だが、大樹の言葉は続かなかった。
頬に衝撃。静かな道に響く渇いた音。
痛む頬から、大樹は悠稀に殴られたと気付く。
「……なんで?」
静かに、だが確かに悠稀は怒っていた。
今なら、徹斗と話せたかもしれないのに。
「どうして邪魔したの」
許せない。
そんな悠稀の瞳を、大樹は真っ直ぐ見つめる。
あまりにも真っ直ぐな瞳に、悠稀の方が少したじろいだ。
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