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悠稀は、ゆっくり目を開ける。 そして見知らぬ部屋にいる事に気付き、跳び起きた。 「……え?」 黒いベットに、白い壁。 殺風景な部屋の中に、悠稀はいた。 自分は確か、外で大樹と話していたはずだ。 近くにあった鏡で、泣き腫らした目を見る。 「不細工な顔」 目が真っ赤で腫れぼったい。 それだけで、悠稀には顔が歪んで見えた。 小さいため息とともに、また回りを見回す。 当たり前だが、悠稀の部屋ではない。 紘子や徹斗の部屋でもないから、もしかしたら大樹の部屋だろうか。 自分は大樹の部屋を知らないから、それなら納得できる。 だが。 必要最低限の物しか置かれていないこの部屋は、大樹には似合わない。 それに、そこかしこに残る気配が、大樹の部屋という悠稀の考えを否定する。
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