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視線の先にいたのは、大樹でも徹斗でもない。 そこにいたのは、悠紫だった。 「……悠紫」 「頭痛くないか?一応、お粥作ってもらったんだけど」 確かに、手に持っているお盆の上にはお鍋が。 「お粥って。風邪じゃないわよ」 くすくす笑いながらも、悠稀は受け取る。 「誰が作ったの?」 「俺の母さん。悠稀の事、気に入ったみたいで」 凄く嬉しそうだった。と苦笑しながら言う悠紫。 悠稀は、心が癒されるのを感じる。 大樹といるのは、確かに凄く楽しかった。 でも、違う。 大樹と一緒にいればいるほど、悠稀の心は傷付いた。 自分の事に大樹を巻き込んでいる罪悪感。 そして、たまに感じる思い。 側にいるのが、大樹ではなく悠紫だったら。 そんな思いに苛まれて、悠稀は辛かった。 その傷が、悠紫といるだけで癒される。 やっぱり、自分は悠紫が好きだ。 嫌でも、そう再確認させられる。
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