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『悠稀が倒れた』 そんな電話をもらって、悠紫は走りだした。 大樹がやけに冷静だったのと、場所が大樹の家の前だという事。 その二つにある違和感に、悠紫は全く気付いていなかった。 「大樹!」 悠紫がそれに気付いたのは、大樹の家の前に着いた時だ。 慌てる事もなく、ただ真っ直ぐ悠紫を見ている大樹。 それに、違和感を感じた。 「おぉ、悠紫。早かったな」 いつもの惚けたような笑顔で迎える。 「……悠稀は?」 そこで、やっと大樹の腕の中にいる悠稀に気付いた。 まるで反応を示さない悠稀。 大樹の言っていた事は正しいのかと、不安になる。 だが、顔を覗き込んで分かった。 小さな寝息、安らかな顔。 悠稀はただ寝ているだけだった。
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