32

12/15
前へ
/373ページ
次へ
『俺、親友の告る場面にいるのかよ?それに――』 不意に、悠紫の眉が寄る。 からかうような言葉。 その言葉を残して、大樹は帰っていったんだ。 なのに。 「それに、なんだ?」 大樹の言葉の続きが思いつかない。 忘れるにしては早過ぎる気がするが、仕方ない。忘れたものは忘れたのだ。 開き直って、悠紫は悠稀が食べたお粥の鍋を片付けに行く。 無造作に食器をおいてきて、すぐに戻る。 寝ているだけでも、心配だ。 それに、やっぱり悠稀の側にいたい。 「……徹」 聞こえてきた悠稀の言葉に、悠紫は固まる。 彼女は確かに、徹斗の名前を呼んだ。 「ごめん、なさい」 涙を流しながら眠る悠稀を見て、思い出した。 大樹の言葉の続きを。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加