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悠稀が目を覚ますと、悠紫はベッドにもたれて眠っていた。 その脇には、サンドイッチが置いてある。 悠稀が起きたら食べられるようにという事だろう。 「悠紫?」 そっと声をかけてみても、悠紫は起きない。 さらさらの夜色の髪を撫でる。 「……ん」 小さく唸る悠紫を見て、慌てて手を引っ込めた。 だが、起きる気配はない。 安堵の息を吐いたあと、また再び髪を触る。 手に馴染むこの感触は、好きだ。 あまり手入れをしていないようなのに、彼の髪は傷なんてついていない。 「羨ましいなぁ」 自分は、いろいろ手入れをしているのに。 長くて綺麗な、自慢の髪だから。 「悠紫、ねぇ起きて?」 呟きながら体を揺すると、悠紫は嫌だというように首を振る。
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