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悠紫の家を出て、悠稀が向かった場所。 それは、大樹の家だった。 彼に言わなくてはいけないから。 もう、嘘を付き続ける訳にはいかない。 あんなにいい人なんだから、彼には幸せになってほしいから。 自分と別れてもらおう。 「……大樹」 まるで悠稀が来るのを分かっていたかのように、大樹はそこにいた。 自分の家の壁に凭れ、腕を組んで。 淡い笑みを浮かべて悠稀を見ている。 「来るだろうなと思ったんだ」 やっぱり来た。 今から、悠稀が何を言うのか。 それさえも分かっているかのような大樹の態度。 「大樹、先輩」 「……分かってる。別れてくれ、だろ?」 少し困ったように笑いながら、大樹はそう言う。 悠稀が頷くと、彼は頭に手をおいた。 「やっぱり、悠紫に言われたんだな。やめろって言ったのになぁ」 その言葉に、悠稀の眉がぐっと寄る。 大樹はぴたりと動きをとめた。 「まさか、何も聞いてないのか?」 何が何だか分からないまま、悠稀は頷いた。
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