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ふと、悠稀の後ろを見た大樹の目が丸くなる。 何かを見つけたような反応に、悠稀は首を傾げた。 「大樹?どうしたの?」 「……悠紫」 その呟きに反応して振り向けば、無表情の悠紫の姿。 その表情の無さに、悠稀の体が無意識に震える。 「何してんだ?」 低い声。悠稀は、その声を聞いた事がある。 前に一度だけ。悠稀のクラスの女子が告白していた時。 その時と同じ、冷めた表情と低い声。 見た事のない悠紫の姿に、悠稀はただ怯える。 「悠紫、悠稀が怯えてる」 悠紫から守るように、大樹が一歩前に出る。 それを見ても、表情は全く変わらない。 「戻ってるぞ、悠紫。悠稀の前では止めとけよ」 大樹の言葉に眉を寄せながらも、少しずつ表情に変化が現れた。 「煩いぞ、大樹。それくらい分かってる」 柔らかい声に、困ったような顔。 今は、いつもの悠紫だ。
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