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「悪い、悠稀」
謝られても、何が何だか分からない。
悠稀の表情からそれを感じ取って、悠紫の眉が困ったように下がる。
「怖がらせたよな、悪い」
「謝らないで、悠紫。怖がってないから」
悠稀がそういうと、悠紫は安心したように息を吐く。
「悠紫、もう話したらどうだ?」
そう言われて、悠紫は俯いてしまう。
過去がどうとか、悠稀には全く分からない。
大切なのは、今がどうという事だ。
「……聞いてくれ、悠稀」
だから、悠紫はどうしても悠稀に話したかった。
自分の、消し去ってしまいたい過去を。
「えぇ、聞くわ」
柔らかい笑みで、一つ頷く。
「いいのか、悠稀」
大樹が心配そうに見てくる。
悠稀は強く一度だけ頷いた。
「聞くわ。だって、知りたいから」
悠紫の事なら、なんでも知りたいの。
そう呟いた声は、大樹にしか聞こえなかった。
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