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「言い方は悪いが、大樹は権力という後ろ盾があった。でも、俺には全くなかったんだ」
悠稀の顔を見たくなくて、下を見る。
こうしていれば、このまま話していても軽蔑された表情を見なくていい。
「なかったから、俺は暴力で捩伏せてた。……大樹より怖がられてたからな」
あたりを、静寂だけが支配する。
悠稀も大樹も、誰も何も言わない。
その静寂が、悠紫には悠稀から拒絶されているようで痛かった。
「……それが?」
「え?」
凜、と響いた声に悠紫は目を見開く。
大樹も、驚いたように横にいる悠稀を見つめた。
「それが何ですか?悠紫は悠紫、私の知っている貴方はそんな事しない」
恐れていた拒絶の言葉も、軽蔑する眼差しも、悠稀にはない。
それどころか、悠紫の全てを包むような優しい眼差しだった。
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