33

7/11
前へ
/373ページ
次へ
「言い方は悪いが、大樹は権力という後ろ盾があった。でも、俺には全くなかったんだ」 悠稀の顔を見たくなくて、下を見る。 こうしていれば、このまま話していても軽蔑された表情を見なくていい。 「なかったから、俺は暴力で捩伏せてた。……大樹より怖がられてたからな」 あたりを、静寂だけが支配する。 悠稀も大樹も、誰も何も言わない。 その静寂が、悠紫には悠稀から拒絶されているようで痛かった。 「……それが?」 「え?」 凜、と響いた声に悠紫は目を見開く。 大樹も、驚いたように横にいる悠稀を見つめた。 「それが何ですか?悠紫は悠紫、私の知っている貴方はそんな事しない」 恐れていた拒絶の言葉も、軽蔑する眼差しも、悠稀にはない。 それどころか、悠紫の全てを包むような優しい眼差しだった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加