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「悠稀」 「貴方は貴方。今はそんな事しないんだから、もういいじゃない」 そんなに悩んで、自分を傷つけなくても。 悠紫の心の傷を癒すような、優しい声。 今まで誰も、そんな事言ってくれなかった。 長年積み重ねてきた傷が、少しずつ薄れていくのを感じて、悠紫は笑う。 「ありがとう、悠稀」 何か吹っ切れたような顔をしている悠紫を見て、大樹は嬉しそうに目を細める。 自分は、彼の親友だ。 悠紫は嫌々かもしれないが、自分にはかけがえのない存在。 そんな親友が落ち込んでいるのに、昔の自分は何も出来なくて。 ただ安っぽい上辺だけの言葉しか、かけれなかった。 それなのに悠稀は。 一瞬で悠紫の心の傷を見抜いて、それを受け入れた。 そんな器用な事、自分には絶対にできない。 「悠稀は凄いな。悠紫の傷を、一緒に背負えるんだから」 いきなり言われた言葉に、悠稀は首を傾げて大樹を見る。 そして、呆れたような笑みを浮かべた。
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