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「何言ってるの。私は、大樹に救われたわ」
いきなりの言葉に、大樹は首を傾げた。
自分が悠稀を助けたなんて事、あっただろうか。
そんな大樹の心を読んだように、悠稀は笑う。
「馬鹿ね。私がどうして悠紫の家に行く事になったのか、忘れたの？」
そう言われて、思い出した。
いろいろと起こりすぎて忘れていたようだ。
悠稀も今、心に傷を負っている。
それなのに、彼女は。
悠紫の傷さえ背負えるなんて。
「やっぱりすげぇや」
「ふふ、ありがとう」
悠稀と大樹が笑い合うのを、悠紫はふて腐れたような表情で見る。
それに気付いて、大樹の顔に悪戯っ子のような笑みが浮かぶ。
「羨ましいだろ？」
「……煩い」
わざわざ悠稀に聞こえないように近付いて、囁く。
煩わしいというように手で払い、悠紫は顔をしかめた。
「悠稀、家まで送る」
「ありがとう、悠紫。じゃあお願いするわ」
すたすた歩きはじめる悠紫の後についていきながら、悠稀は大樹に手を振った。
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