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家に帰るまでの間、悠稀はずっと黙っていた。 考える事は、徹斗の事。 自分のために、本気で大樹に怒鳴ってくれた。 自分は彼を傷付いたのに。 もう一生、徹斗の側にはいれないと思った。 「馬鹿よね、徹」 呟く声に反応して悠稀を見る悠紫の視線を笑顔でかわしながら、ただただ思う。 また元の関係に戻れたら。 普通の、幼なじみの関係に戻れるのなら。 自分は徹斗が幸せになるために、全力を尽くそう。 もう彼の好意を利用しないように。 「……何悩んでるのか知らないが、そんな顔するな」 頭に置かれた温もりに、安心する。 そのまま広い悠紫の胸板に顔を埋めた。 「悠紫。私ね、最悪なの。大切にしたい人を傷付けた」 「あぁ」 話すつもりなんてなかったのに、言葉が次から次へと溢れてくる。 それを、悠紫は相槌をうつだけで嫌がるそぶりをしない。
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