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悠稀が一歩下がると、その分徹斗が歩み寄る。
部屋の広さには限りがある訳で。
それを繰り返していると悠稀の背中はひんやりとした壁にぶつかった。
「徹…」
「誰だよ」
徹斗は悠稀に覆いかぶさるように壁に手をつく。
そうしても、悠稀の顔は赤くならない。
それが、徹斗には気に入らないが、今は関係ない。
徹斗は、悠稀が言うまで離さないつもりだ。
「あ、あなたは知らないわよ」
やっと、悠稀が口を開く。
「だって、私の高校の先輩だから」
はっと、徹斗は気付いた。
中学ではいつも徹斗が側にいた。だから、誰も悠稀に近付かなかった。
それが当たり前だと思っていた。
だから徹斗は、悠稀と離れたのに。
それは、徹斗自らが悠稀を手放した事になるのだと、いまさら気付いた。
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