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家の中に入っても、お互い無言だった。 悠稀には、何を話せばいいのかが分からない。 あんなに謝ろうと決めていたのに。 もしかしたら、また傷付けるんじゃないだろうか。 そう思うと、何も言えなくなった。 「……悠稀はさ、深く考えすぎなんだよ」 不意に、徹斗が呟くように言う。 今の悠稀に対するアドバイスなのだろうか。 「徹、あのね」 深く考えないように。 そうすると、自ずと言わなくてはいけない言葉が浮かぶ。 それは簡単な言葉だ。 それでも、ちゃんと今の悠稀の心を徹斗に届けてくれる。 「……ごめんなさい」 深く深く頭を下げる。 傷付けてごめんなさい。 最低な事をして、ごめんなさい。 その思いを、一言に込める。 徹斗は苦笑しながら、悠稀の頭を撫でてくれた。
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