34

6/20

2034人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
「俺こそ、悪かった」 「……なんで、徹が謝るのよ」 ぽろぽろ涙を流しながら、悠稀は笑みを浮かべる。 徹斗はただ頭を撫でたままだ。 縋り付いて思いきり泣きたい。 それでも、もうそんな事は出来ないんだ。 二人とも、気付いたから。 このままじゃ駄目なんだ。 近すぎるからますます傷付く。 だから。 「徹、もう大丈夫よ」 自分は少し、徹斗から離れよう。 心配してくれるこの彼から離れて、ちゃんと一人で生きていこう。 「だから、あなたも私を気にかけなくていいの」 そう言って、悠稀は徹斗の前髪を除ける。 その髪に隠れていた傷が、見えた。 痛々しい切り傷。 それはあの時、斎によって付けられた傷だった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加