2034人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
「俺こそ、悪かった」
「……なんで、徹が謝るのよ」
ぽろぽろ涙を流しながら、悠稀は笑みを浮かべる。
徹斗はただ頭を撫でたままだ。
縋り付いて思いきり泣きたい。
それでも、もうそんな事は出来ないんだ。
二人とも、気付いたから。
このままじゃ駄目なんだ。
近すぎるからますます傷付く。
だから。
「徹、もう大丈夫よ」
自分は少し、徹斗から離れよう。
心配してくれるこの彼から離れて、ちゃんと一人で生きていこう。
「だから、あなたも私を気にかけなくていいの」
そう言って、悠稀は徹斗の前髪を除ける。
その髪に隠れていた傷が、見えた。
痛々しい切り傷。
それはあの時、斎によって付けられた傷だった。
最初のコメントを投稿しよう!