34

7/20

2034人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
この傷に、今誓おう。 「私は、もう一人で大丈夫」 徹斗に守ってもらわないように、強くなると。 悠稀の強い瞳を見て、徹斗は笑う。 彼女はもう大丈夫なんだ。 自分が守らなくても、悠稀は。 一人で生きていくだろう。 「がんばってな」 優しく笑いかけてくれる徹斗。 「えぇ」 悠稀は満面の笑みで答えた。 二人の間に出来ていた溝は、綺麗さっぱりなくなったようだ。 「それじゃあ、私は帰るわ。またね、徹斗」 目を見開く徹斗を見ようともせず、悠稀は走り出す。 だが、気付いた。 悠稀の耳が赤く染まっている事に。 それが少し微笑ましくて、徹斗は照れたような笑顔。 やっと呼ばれた、昔の呼び名。 それは何故か、酷く照れ臭かった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加