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「……えっと」
さっきまで真剣だったのに。
悠紫は珍しく、躊躇っているようだ。
「どうしたの?」
くすくす笑いながら先を促す悠稀。
悠紫は覚悟を決めたように悠稀を見ると、いきなり手を握る。
握られた事に驚いて、手の中に何か渡された事にもっと驚いた。
「何?」
「開けてみろ」
手の中にあったのは、小さな箱だった。
言われた通り開けてみると、悠稀の目が見開かれる。
「本当は、悠稀が落ち込んでた次の日に渡すつもりだったんだ」
でも、無理だった。
次の日、悠稀はもう手の届かない場所にいたから。
でも、今は。
手を伸ばせば触れられる。
誰のものにもなっていない悠稀が、いる。
それが、悠紫には嬉しかったのだ。
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